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はじめに
医療安全対策は,各施設において促進される一方で,医療事故報道は減少傾向を見せる気配はいまのところない。それどころか,医療従事者にとってますます深刻な情報が流布されている。2003(平成15)年4月,厚生労働省令第111号により,特定機能病院に対して,安全管理部門の設置と専任の安全管理者の配置が定められた。東海大学医学部付属病院(以下,当院)においても,専任の安全管理者として看護師が任命され活動が開始された。これを機に過去数年にわたる医療事故防止を目的とした医療安全体制を顧みつつ,何が改善の取り組みにつながるのか今後の対策を考えたい。筆者は,本誌2001年12月号にて,看護部の医療安全対策委員の立場で「医療安全対策の実際――東海大学病院看護部の取り組み」と題して執筆した。本稿では病院の専任安全管理者の立場で,その後の改善の取り組みをまとめる。
今日までの活動の経緯として,次の点が当院の医療安全対策のポイントとして挙げられる。
(1)定期的に開催される医療安全対策委員会では,各職種から委員が任命され,院内各部署から情報が収集されている。活動内容も,現場での実践的な医療・看護行為が取り上げられてきた。しかし,広報活動と相まって形式的には整備されたが,病床数1133床の当院で働く全職員の活動の浸透状況,評価は,今一つ計り難いのが現状である。特に医師の医行為に対するインシデント・アクシデントの見解および安全対策の認識はさらに高める必要があろう。
(2)報告制度では,インシデントレポートはさほどの増減もなく,年間5000件以上の報告を維持している。定量分析では,厚生労働省,他施設の傾向とほぼ同様に推移している。レポートの活用は安全対策活動の柱となっている。定性分析は,4M-4E分析を中心に組織的な構造の要因分析を行ない,対策を深めている。また,院内のコミュニケーションの促進および病院システム上の問題の発見と業務改善への効果があった。
(3)マニュアルは,毎年改訂を加えて全部署で活用している。遵守状況は看護部では“相互チェック”およびRMの活動,委員会を通して点検され周知されているが,マニュアル以外の異なった方法がなされている実態もあり,全体的なチェック機構の再検討の余地がある。
(4)研修に関しては,計画的に,部門毎で実施されているが,看護部以外の他部門の出席率向上の対策が残されている。研修の具体的な成果として改善された事項は看護部の集計より「患者誤認」「輸液ルート装着間違い」「輸液ポンプの操作ミス」「誤注入」である。
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