特集 患者・医療職を“暴力”から守る環境をどうつくるか
院内暴力と医療の在り方をめぐって
飯田 英男
1,2
1関東学院大学法学部
2奧野総合法律事務所
pp.824-828
発行日 2006年10月10日
Published Date 2006/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100375
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はじめに
院内暴力の問題は,部外者の目に触れることはあまりないが,医療関係者の間では日常的な問題のようであり,その落差の大きさには改めて驚かされる。院内暴力といっても,その内容は物理的な暴力,言葉による暴力やネグレクト,セクハラなど態様はさまざまであり,また,行為者の側面からみれば,患者ないし家族からの暴力が主たるものではあるが,医療従事者間とりわけ医師相互間や医師から看護師らに対する暴力,さらには看護師相互間における暴力などさまざまな態様が認められる。
これらの暴力問題は,一般社会においては,状況に応じて刑事法や民事損害賠償の対象とされる場合もあるし,そこまでいかない場合でも社会的な批判の対象に組織管理者の責任が追及される場合もあり,一方的に被害者が泣き寝入りすることが当然とされるようなことはない。
ところが院内暴力については,これまでそのような問題が存在することすらほとんど明らかにはされておらず,かえって病院内部では被害者側である医療従事者に問題があるとして,事実上処理されてしまっているところにこの問題の根深さがあるように思われる。
最近,特に若い看護師がこのような院内暴力にあっても看護師に我慢を強いるだけで,病院側がいっこうに救済措置を取ろうとしないことに嫌気がさして退職してしまうような事例まで起きていると聞く。院内暴力の問題は,医療の在り方とも深く関わる問題であるので,このような視点から院内暴力の原因やこれを抑止する方策などについて考察してみたい。
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