BOOK REVIEW
認知症と診断されたあなたへ
桑田 美代子
1
1青梅慶友病院看護介護開発室・老人看護専門
pp.236
発行日 2006年3月10日
Published Date 2006/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100044
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いまの筆者に少なからぬ影響を与えた3人
2年ほど前,本書の編著者である小澤勲氏の『痴呆を生きるということ』(岩波新書)が出版された。以来筆者はすっかり小澤勲ファンになっていた。それまで模索しながらも認知症患者と関わり,経験を積めば積むほど認知症ケアの奥深さを日々実感していたこともあり,光明を与えられたからである。座学ではない,実践知に基づいた生きた言葉がそこには書かれていた。本書も,表紙を開けると真っ先に「認知症をかかえるあなたへのメッセージ」が目に飛び込んできた。今のご自身の状況と照らし合わせながら,粛々としたなかにも小澤氏であるからこそ語られる世界がそこにあった。その世界にまたしても引き込まれてしまった。
もう1人の編著者,黒川由紀子氏と筆者は,所属する施設は異なるが,同法人に務める同僚でもある。この本は黒川氏の教え子である学生から「なぜ,認知症の方自身に向けた本がないのか」と問われたことが端緒となり出版に至ったという。筆者なら聞き流していたことだろう。いつも前向きな彼女らしいところである。高齢者と関わっている姿に学ぶ点が多々あり,スタッフの話にも真剣に耳を傾けてくれる。だからこそ,学生の素朴な疑問をも漏らすことなくキャッチし,この企画の実現に漕ぎ着けたのだと思っている。
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