連載 Beacon Lamp・2
繊細な心で奏でる大胆なタクト―音楽という実践のなかで関係を紡ぐ専門家[金聖響さん]
前川 幸子
1
1大分大学医学部看護学科
pp.93-95
発行日 2006年2月10日
Published Date 2006/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100019
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
曲の意味さえもわからないのに,その楽曲に触れただけで涙がはらはらと流れ落ちるという経験をされた方もいることと思う。音楽は,「人として皆がもっている,多分『魂』の部分がすごくしびれるんだと思うんですよ。そこに共鳴するはずなんですよね。どういう音楽を聴いても」,特に「クラシックの音楽って,たぶん魂が共鳴するという次元の,ものすごく崇高なところ,高いところにあると思うんですね。振れ幅もそうだし,震え方もそうだし」。そう言うのは,前途を嘱望されている指揮者,金聖響氏である。音楽のない日常は考えられないほど音楽好きの私は,大きく頷いた。まさしくそうなのだと実感できた。
金氏は,大阪で生まれ幼少期に渡米,ボストン大学で哲学を学んだ後,指揮者という職業に就いている。その才能は早期から周囲に認められ「ニコライ・マルコ国際指揮者コンクール」で優勝するなど,注目を集めている。私にとって音楽は,日常の背景であるが時に主題にもなる。そのような音楽との関わりのなかで,私の関心は指揮者と演奏家という専門家同士の関係にあった。指揮者はさまざまなオーケストラと作品を創り上げていく。それも短期間に。指揮者,そして演奏家というプロフェッショナル同士は,作品の世界をどのように共有し,創り上げていくのだろうか。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.