特別記事 脳科学からみた看護
エンパワメントを脳科学的にみる
玉木 敦子
1
1兵庫県立看護大学
pp.261-267
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900678
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はじめに
エンパワメントの概念が最初に定義されたのは18世紀であるが,その考えが一般に注目されはじめたのは,1960年代後半にはじまった社会運動以降である。その後もセルフヘルプ運動においてエンパワメントの概念は重要な役割を果たし,さらにコミュニティへの介入方法やメンタルヘルスなど,さまざまな分野で用いられるようになった(Gibson,1991)。看護においても,1980年代後半からエンパワメントの概念が用いられはじめ,文献に取り上げられる数もアメリカを中心に急速に増加している(野嶋,1996)。
このような歴史的背景にも影響され,エンパワメントの定義は一定しておらず,人々の関心によって定義されるべきだともいわれている(Gibson,1991)。ただし,抽象的なレベルではおおよそ「人々や組織やコミュニティが,自分たち自身の生活全体をコントロールできるように力を得るプロセス」を共通理解とすることができる。また,エンパワメントは相互作用であり,つまりエンパワーされる者とする者が必ず存在するということもほぼ一致した見方である。
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