焦点 看護実践・理論・研究をつなぐアクションリサーチ
看護におけるアクションリサーチ:エンハンスメントアプローチの理論と方法論
稲吉 光子
1
1北里大学看護学部
pp.501-509
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900645
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はじめに
近年,看護学では実践に結びつく知識を生みだす質的研究に焦点が当てられてきている。看護実践に結びつく知識とは,状況を判断し,適正な看護行為を選択する認識・理解である。看護実践は思考期(thinking phase)と実施期(doing phase)の2つの局面ある。思考期とは看護婦・看護士(以下,看護婦とする)の持っている知識から患者のケア内容を明らかにして,その方法を立案することである一方,実施期とは看護行為として実際に行なうことである。看護行為は個別的な状況で,繰り返しがきかない場面で展開されるという特性があるので,看護婦はその時,その場での判断に頼ることになる。また,看護実践では看護行為が計画されたように行なわれないことも生じる。これは思考と実践とのずれとして指摘されている(Kim,1994)。そのために,この現実を直視し改善していくために,社会介入による研究が必要となる。
看護婦は患者との問題だけでなく,保健医療を取り巻く組織風土的な要素からも影響を受けている。医療需要,人員,看護需要などの社会的状況や就業場所の組織規定などに拘束され,看護婦は,めざすべき方向というよりはむしろ現状にあわせて日常のケアを行なうようになる。
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