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看護のスペシャリストとは
看護のスペシャリストはなぜ必要か
日本におけるスペシャリストの現状
日本における看護スペシャリストの展望
はじめに
私は教職につくまでに11年間の臨床経験を持っています。内科,外科系の病棟を何か所か回って,教育の道に入りました。その間書1964年から66年までの2年間をアメリカでがんの看護のスペシャルコースで,がん看護の経験を積んできました。そして,1974年から76年にかけては,ミネソタ大学の大学院で内科,外科系の看護を専攻してそのスペシャリストの道を模索し,多くのスペシャリストたちに接触してきました。また2〜3年前に変化したアメリカのスペシャリストたちに会っていろいろ話を聞く機会も持つことができました。
私はこのたびの講演のために,再びいろいろと文献を調べてみましたところ,1977年に国際看護婦協会の大会が東京で行なわれましたが,その前後の1976,77,78年に看護のほとんどの雑誌で看護スペシャリストのことが取り上げられています。私も医学書院発行の『看護学雑誌』1978年1月号で「拡大する看護の役割・看護専門分化の方向を探る」という特集の中で,看護の専門分化に伴う教育のあり方というものを書かせていただきました。それをもう1度ひもといてみて,日本の看護の専門分化はどれぐらい進んだだろうかという点から考えてみましたが,日本の現状からはそんなに大きな変化があったようには思いませんでした。
ただ,これを進歩と言うならば進歩だなと思いましたのは,拡大という言葉を使わなくなっていることです。看護の専門分化という言葉がありましても,役割が拡大したというようにはどこにも使っていないのです。それを思いました時に,先ほどのHamric先生のご講演にもありましたが,やはり看護学の発展のようなものを感じさせられました。拡大というのではなく,看護の役割そのもの,あるいは看護の学問の内容そのものが広くなり,また,深くなったのだということを感じさせられました。
そして,1976年から見ますと約20年近い歳月が流れていますが,アメリカではその後どうなったかということはHamric先生から最初の講演でお話がありましたし,またこの後にも,詳しくお話がございます。
では,日本ではどうだろうかと見てみますと,実は皆様方ご出席いただきますにあたりましてアンケート調査をいたしました。それは日本の現状を広く私たちも知りたいと思いましたし,それを皆様方にお返ししたいと思いまして,参加者の300名ほどの方に送りました。回収率はそれほど高くはなく36%ぐらいでしたが,それでもその方たちがとても丁寧にご回答くださいましたので,今日の私の話の中では相当参考になるかと思っております。アンケートの回答に現れたような意識が私たちの中にあるということ,また,シンポジウムでご発表いただくような活動が現在日本の中であるということ,一方,社会のニード,あるいは医療の現状,看護の現状というものを眺めてみますと,そこからの要請で本格的にスペシャリスト化が進行中だということを思わされております。
実際の活動に関しましてはシンポジウムでご討議いただくとしまして,私自身は日本における看護のスペシャリストの現状と展望について委員会の中での検討を通して,また,皆様からいただきましたアンケートの結果とか,私の経験等々を踏まえて述べさせていただきます。
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