病院の窓
スペシャリスト
巷野 悟郎
1
1東京都立府中病院
pp.361
発行日 1978年5月1日
Published Date 1978/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206523
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医師は,卒後の研修によって,自分の希望する専門領域が決まり,病院へ勤務する医師も,開業する医師も,その専門領域を中心として,医療に携わるのが普通である.殊に病院という組織のなかでは,自分の専門科は,他科から明瞭に区分されているので,一層専門化されてくる.病院の規模によっては,必ずしもそのようなわけにはいかないこともあるが,開業医師に比べれば,ひとりひとりの医師の受け持つ範囲は,かなり限られているのが普通である.現在のような診療科の分け方が良いか悪いかは別として,長い歴史で分科してきた現在の診療体系のなかで,各医師は,その一部を担っているのである.
さて,小児科を例にとれば,近頃ではその対象は出生前小児科学という生まれる前の胎児から,さらにさかのぼって,遺伝子の組合わせにまで及び,先は思春期年齢から,成人病との関係での小児医学というところにまで広がっている.したがって,小児科の分野で,たとえば心臓にかけて蘊奥を極めているのであれば,小児の心臓領域における専門医と呼ぶことはできるだろうが,いわゆる小児科専門医というのが存在するかどうかということである.それはあまりにも対象とする小児科の領域が広くなったからである.これは内科でも外科でも同様であり,いわゆるクライン・ファッハと呼ばれる皮膚科でも眼科でも同じであろう.しかも各科の研究領域はお互いに入り交っている現在,従来からの科単位での専門医の呼称が果たして適当かどうか疑問である.
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