特集 国際シンポジウム「家族看護学研究の動向:患者と家族のQOLの向上と看護の充実をめざして」
第II部 成人・老人看護における家族看護学研究の動向
シンポジウム・3:日本におけるがん患者家族の現況と家族看護学研究について
佐藤 禮子
1
1千葉大学看護学部
pp.171-177
発行日 1994年6月15日
Published Date 1994/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900192
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はじめに
世界保健機関の1990年と1991年の発表に基づく人口10万人に対する悪性新生物死亡率の国際比較では,わが国は,男性が8番目,女性が11番目に位置しています。全人口に対する死因別死亡に見るがんによる死亡は,1981年から(12年前から)死因の第1位を占めるようになり,1991年には,死亡数約22万人,死亡率は181.7,総死亡の27.0%となっています。また,年齢階級別がん死亡率では,30歳以降に急激な増加があり,30歳から79歳で,死亡順位の第1位となっています。
がんの治療法は,単独あるいはいくつかの方法を組み合わせる併用療法が行なわれますが,国立がんセンター病院の1991年の初発症例の治療法は,手術が全体の65%に,薬物療法は32%に,放射線療法は16%に行なわれ,併用療法は22%であったと報告1)されています。いずれの治療法も,身体への侵襲が大きく,大変苛酷な体験を個人に強いるものです。つまり,がん患者・家族の抱える問題は,がんに対する戦略がわが国の大きな課題であると同時に,成人・老人看護学の教育研究分野にとっても大きな位置を占めるものです。
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