研究論文集 原著論文
慢性病患者の看護援助の構造化の試み—糖尿病専門外来看護の臨床経験を通して(その2)
正木 治恵
1
1千葉大学看護学部
pp.49-74
発行日 1994年2月15日
Published Date 1994/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900180
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第2章 結果(つづき)
9.患者が真の自己決定をしていくことに関わる援助過程〔援助過程(9)〕
1) 援助過程の実際
援助過程(9)は,患者にとって人生行路上の重要な決定が必要な時期であることを筆者が認識し,患者が貞に望む方向に,納得できる方向に自己決定していけるよう働きかけたものである。自己決定していくまでの過程で,患者は揺れる気持ちを筆者に表現していた。その揺れは,糖尿病の療養を継続していく必要があるという糖尿病患者として自分と,白分が望むこと,やりたいことを達成していくという一個の人間として自分との,兼ね合いをつけていくことへの揺らぎであった。すなわち,真の自己決定とは,患者の体と心が一体となって下される決定であり,それは糖尿病患、者として身体をケアするという観点と,自己実現につながるその人の持つ価値や生き甲斐を実現するという観点が,調和のとれた形で融合された結果下される決定である。筆名は,時には決定を方向づけようと強引になった時もあったが,できるだけ患名の揺れる気持ちを十分に聞き,迷いながら進んでいく過程を一緒に付き合おうと関わった。その過程を通して患者は自分を客観視し,自分の状況を充分吟味した上で自分にとって納得のいく決定を下していった。そして患者はその決定した状況に満足して適応していった。
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