- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
概念をつくる
私たちは,自分たちが経験した看護現象を説明し,また健康問題を抱えている「その人」に効果的な支援を提言しようと常に考えている。その現象に適切な名前がつけられ,その状態を説明してくれて,解決策を示唆してくれるような理論があればよいが,いくら調べてもピッタリくるものがない場合は,創らねばならない。そのとき何よりも重要なのは,現象を的確に示す焦点概念(コア概念)をつかまえることだと,私は考えている。それは,理論の柱を成す。例えば,Dr. Oremの理論であればself-careであるし,Dr. Meleisの理論であればtransitionsである。
現象を記述するためには,概念を使う。概念はある現象や考え,ものや行為など,経験する多くの事柄の中で類似性や同質性を見出しながら,私たちが心の中でつくりあげた心的イメージである。概念は理論を組み立てるためのレンガである(Hardy, 1974)ので,まず焦点概念が明確にならないと理論構築も始まらない。私は,概念構築の過程を図のように考えている。Meleis(2017)によれば,ラベリングをしてから定義へと進むのだが,実際にはよいラベルはなかなかみつからず,ほとんどはピッタリこないことのほうが多い。現象を捉え記述することと定義とは非常に近い関係にあり,現象を詳細に記述したあと,それを示す適切なラベルを探しながら,その現象の本質は何かを,絶えず現象に戻りながら確認する。このプロセスは理路整然と直線的に進むものではなく,「こんな感じかな?」と,言葉(ラベル)を仮置きし現象を整理してみて,「何か違うな」となればまた違うラベルを置く,という作業を繰り返しながら,定義へつながる現象の説明を試みる。多くの理論家は,これぞ看護だと自分が思った現象を表現するために,膨大な時間を費やしている。
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.