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本論文は2018年8月にOnline firstで公開され,筆者はウィーンで開催されていた国際混合研究法学会(Mixed Methods International Research Association: MMIRA)の懇親会会場に駆け付けてきた八田氏から,その一報を聞いた。この論文は実に長い時間をかけた査読者とのラリーののちにJournal of Mixed Methods Research(JMMR)に掲載となったと伺った。まさに渾身の論文である。JMMRは混合研究法の方法論を扱う論文を掲載しており,経験的論文の多くは各専門誌への投稿を勧められる(すなわちrejectされる),混合研究法に特化した国際的学術誌である。
わが国のがん医療は,患者の主体的な治療参加が推進され,医療現場では,医療者−患者間のコミュニケーションが重視されている。本論文では,肺がん,および乳がん患者計20名を対象として,外来診察場面における医師−患者間の対話に焦点を当て,「治療動機づけ指数(MTI)」を用いた「患者が治療法を選択する際の自身の動機づけの強さ」という量的評価と,MTIの高低,すなわち治療選択の動機づけの違いによって,「医師と患者との間で生じる対話の内容」(質)がどのように異なるのかを,収斂デザインによるクロスオーバー混合分析により検討している。クロスオーバー分析は,量的データと質的データを完全には独立して分析できない場合,量的ストランド(工程)と質的ストランドの両者からの発見を絡み合わせて,研究全体を通して,双方の種類のデータが双方に情報を与え合う,さらに,帰納法と演繹法の間で,研究者の視点が行き来を重ねて相互補完的に事象を理解する方法論をとった研究となっている。この研究では,4回もの行き来がなされている点にその特徴がある。
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