特集 看護における混合研究法の進展
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MMR道における「守破離」の実例
抱井 尚子
1
1青山学院大学国際政治経済学部
pp.155
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201862
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本論文の貢献を,混合研究法教育の視点から述べさせていただく。そもそもこの研究が混合研究法(MMR)を採用するに至った背景には,著者らの研究課題が「従来の方法論では研究の俎上に乗らない」(八田,2019, p.40)ことへの気づきがあったという。私自身が最近,看護研究者の方々のお話を伺う機会を得て感じるのは,本論文を含め,医療実践の現象を研究対象とするとき,この「従来の方法論の限界」に直面し,多くの看護研究者がMMRの領域に足を踏み入れるケースが多いということである。しかし,一見非常に複雑でとっつきにくそうなMMRには,足を踏み入れたくても躊躇してしまう看護研究者の方々も多いようである。質と量の両方のデータを収集・分析したものの,自分のやり方が本当に正しいのか……そうした不安から,前に進めなくなってしまうケースが少なくないようだ。
2018年の日本混合研究法学会第4回年次大会における学会企画ラウンドテーブル「結局,混合研究法の何が難しいのか」では,本論文の第2著者である成田慶一氏が,MMRの学びを「柔道の形(かた)」の修得に喩えた。これを私なりにまとめるならば,MMRの専門書籍で紹介されている数々のデザインは「MMR道の形」にあたるもので,初学者はまずこの「形」を足掛かりにMMRを修得していくのが肝要ということだ。この点は私も同意するところである。ある程度「形」を自らのものとした後は,これを独自のデザインへと発展させることができると考えている(抱井,2015)。本論文はこの発展の可能性を具現化した,MMR道における「守破離(しゅはり)」の実例といえる。
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