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はじめに
日本看護科学学会が出版している英文誌『Japan Journal of Nursing Science』(以下,JJNS)は,2004年に第1号の冊子を出版して,2021年で18年目を迎える。編集長の米国ラトガース大学前学部長・William Holzemer博士のリーダーシップのもと,私も創刊時から編集委員会の委員を今日までつとめており,ほぼ毎日,査読業務を行なっている。JJNSは,2008年にScience Citation Index Expanded(SCIE),Social Sciences Citation Index(SSCI)に収載,2009年には「MEDLINE」に登載され,国際的ジャーナル(学術雑誌)として認められている。編集委員会の目標は質の高い英語論文の発刊であり,目標に向かって投稿の促進と教育,円滑な査読システムの改善に取り組んでいる。
2019年度日本看護科学学会の真田弘美理事長(東京大学大学院医学系研究科教授)の方針により,若手研究者育成のための重点活動の計画が,「若手研究者活性化に向けての取り組み 2019年度 報告書」註1として発表された。日本看護科学学会の役割として最も大切なことは,Nursing Scienceに貢献する論文の公表と学術集会の開催,若手Academiaの育成であると謳われた。学会の役割としては,学会員による質の高い看護研究論文を学会誌に掲載することと同時に,若手研究者の修士論文,博士論文の掲載を積極的に推奨することも重要である。若手研究者にとって,和文誌(『日本看護科学会誌』)は修士課程や博士課程の論文を掲載する場,英文誌JJNSは博士論文,あるいはそれに準ずる若手研究者の論文を掲載する場として位置づけている。上述の報告書の中に記載されたJJNSの課題,目標,その実現に向けた方法は,以下の通りである。
【課題】日本人の筆頭著者の投稿数が少ないこと,投稿から初回査読結果の返信までの日数が長いことが課題である。JJNSが論文公表の場として,学位論文の投稿先候補に入ることが考えられるが,論文採択までに時間がかかると,その対象とならない。また魅力ある学術ジャーナルとしてインパクト・ファクターを上げる戦略が必要である。
【目標】英文誌を日本人(会員)にとって投稿先として魅力的な学術誌にする。
【方法】
・若手研究者への支援・教育 若手研究者(大学院博士課程の大学院生,看護系大学の若手教員,臨床における研究者)を対象にした英文論文の執筆・公表までの支援・教育セミナーを開催する。セミナー内容は,英文アカデミック・ライティングの基礎を含む内容とする。開催場所は,東京および地方での交互開催とする。個別相談の機会を増やす。毎年JJNS セミナー中のプログラムの一部とするほか,毎年の学術集会において個別相談窓口を開く。ハゲタカジャーナル(Predatory Journal)への投稿を避けるための留意点を教育する。
・迅速な査読システム JANS会員だけが利用できるFast Track Review(迅速査読)のシステムを創設し,博士学位申請論文の迅速査読枠を設ける。Webサイト等で,大学に提出した博士の学位論文,あるいは博士学位の申請に必要な論文である場合には,迅速審査を受けることができることを周知する。現在の査読システムは,「第一段階:初期査読での振り分け」「第二段階:Subjective Editorの判断」「第三段階:Subjective Editorの他に2人の査読者を決めて通常査読を行なう」という3段階システムを採択しているが,これがうまく機能しているかモニタリングする。優秀な査読者を得るために,優秀査読者の表彰を行なう。査読者には,年度ごとに感謝状を発行し,研究業績に査読実績を表すように広報する。迅速な査読システムの構築に不可欠な,査読者を育成するセミナーを開催する。
・インパクト・ファクターを上げる戦略 システマティックレビューの掲載を増やす企画を行なう。臨床ガイドラインなど,JANSの学会活動に連動している研究活動を原著や総説として発表する機会を提供する。研究活動,論文執筆における文献検索において,常に広く国際誌を検索してほしいことをセミナー等で伝える。
【Key Performance Indicator:重要業績評価指標】
(1)日本人の投稿数を130 本まで増加させる。
(2)投稿から初回査読結果の返信までの期間を平均60日に短縮する。
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