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経緯
日本看護科学学会が若手研究者の支援を行なうことになった経緯
日本看護系大学協議会・日本私立看護系大学協会の「看護系大学に関する実態調査(2018年度)」註1によると,わが国では173の看護系大学院が設置され,2018年度の修士課程(博士前期課程)修了生数は1555人,博士後期課程修了者数は249人(論文博士号取得者24人を含む)となっており,毎年1800本の修士論文・博士論文や相当する課題研究等が行なわれていると推測される。これらの論文が学術論文として出版されている割合を示す資料はないが,大学院教育に携わる教員の実感としては,出版されずにいわゆる「お蔵入り」になっている論文も多いと思われる。もちろん修士論文は残念ながら,学術論文として公表する意義がある成果を達成できないことも多い。しかし,研究参加者に対する礼儀や同じような研究が今後も行なわれていく可能性などを考えると,できる限り学術論文として出版されることが望ましい。一般に修士論文・博士論文を投稿することは,若手研究者がアカデミアに入るための第一歩であり,重要な成長の機会であることも異論は少ないであろう。
日本看護科学学会は看護学の発展を図り,広く知識の交流に努め,もって人々の健康と福祉に貢献することを目的に1981年に発足した,わが国で最も歴史がある看護系学会の1つである。和文誌である『日本看護科学会誌』は発足年である1981年から発行され,2004年には英文誌の『Japan Journal of Nursing Science(JJNS)』の発行が開始された。日本看護科学学会発足から40年が経過し,当時10校に満たなかった看護系大学数は280校を超え,冒頭の記述のとおり看護系大学院も170を超えた。看護系大学の急増は看護学の学術コミュニティの基盤を強固にした反面,看護教員の不足や若手研究者が教育・研究者として十分に成熟しない状態で教育・研究を担わなくてはならない事態を引き起こした。このような状況を受け,日本看護科学学会による2011年の「将来構想委員会報告書」では,今後の学会活動のビジョンの1つとして,「若手研究者の育成に力を注ぎ,将来にわたって優秀な研究者を継続的に育て,看護学の学問的発展に寄与出来るようにする」ことを挙げた註2。それを受け,2013年には39歳以下の学会員を対象にした「若手看護学研究者の研究実施状況に関する調査」が実施され註3,2014年には若手研究者活動推進委員会が発足した。時を同じくして,2014年には日本学術会議から「ケアの時代を先導する若手看護学研究者の育成」が公表されている註4。
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