特別記事
ナラティヴ分析への誘い—看護研究における可能性
宮坂 道夫
1
1新潟大学大学院保健学研究科看護学分野
pp.70-80
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201848
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多様な分析方法の集合体としてのナラティヴ分析法
ナラティヴという概念の多面性
本誌の読者の多くは,ナラティヴ分析を質的分析法としてとらえ,研究参加者の語りを解釈する手段としてイメージしているのではないだろうか。確かに,看護研究においては,そのようなものとして用いられることが多い。しかし,他の領域に視野を広げて研究論文を眺めわたすと,ナラティヴ分析は相当に多様な姿を呈している。分析の手法も一通りではないし,対象も「語り」や「言葉」ばかりではなく,「絵」や「音」にも用いられている。さらには,意外に思われるかもしれないが,量的研究法として用いられることもある(Franzosi, 2012)。つまり,ナラティヴ分析は,単一の分析方法ではなく,多様な分析方法の集合体のようなものなのである。
どうしてこのような多様性が生じるかというと,「ナラティヴ」という概念そのものが,いくつもの側面をもっていて,そのどこに着目するかによってさまざまな分析の手法が生まれるからである。昨年刊行した本(宮坂,2020)の中で,このナラティヴという概念を少し掘り下げて考える機会がもてたのだが,その中で特に研究方法に関連があると思われたのが,ナラティヴには,「語られたもの」と「語るという行為」という,2つの大きな側面があることである。
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