書評
症状と病気について基礎から学ぶ自己学習支援書
林 直子
1
1聖路加国際大学看護学部
pp.673
発行日 2018年12月15日
Published Date 2018/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201583
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本書は「基本を学ぶ看護シリーズ」の第3巻として刊行された。同シリーズは,看護職の主要な役割のひとつである症状マネジメントに必要な医学・生物学の基礎知識を,段階的,系統的に習得できるよう,監修者らにより構成されている。既刊の第2巻は,『からだの仕組みと働きを知る』というタイトルの解剖学,生理学のテキストであった。その際に感じた驚きを,今回本書で再び感じることができた。それは,“面白く,惹きつけられる”ということである。本書は看護系の講義科目でいうところの,病態学あるいは疾病学の概論テキストに該当するであろう。病態学,疾病学概論というと,一般的なイメージでは(誤解を恐れず言うなら)複雑・難解で,終講試験を思うと気持ちが沈む科目,という位置づけかもしれない。そのテキストが面白い,とはどういうことか。
第一の特徴は,文章表現,図表,イラストに至るすべてにおいて,とてもわかりやすく記載されていることである。例えば「炎症」の項では,だれもが知る炎症という語の定義に始まり,炎症の各症状がなぜどのようにして生じるか,また炎症が発熱を伴う際の理由と機序が詳細に解説されている。これを知ることで,看護学生は,炎症所見を有する患者を受け持つ際,患者の炎症反応にまつわる臨床症状を視診とデータで確認し,フィジカルアセスメントの結果をケアにつなげることが可能となる。また発熱をきたしている場合は,炎症との関連や効果的な解熱方法とを結びつけて思考することができる。それにより患者の与薬内容とその効果予測を根拠に基づいて行ない,併せて与薬後の患者をどのようにアセスメントすべきかがわかるのである。
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