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解剖生理の看護学基礎領域のテキストは,ほとんどが医師職のみで執筆されている。しかし本書の執筆者の方々は長年の看護教育者で解剖学,生理学,生化学,健康科学,放射線学分野の看護基礎教育の第一人者であり,看護教育に長年携わっている看護職が共同で監修・執筆した画期的な,これまでに類をみない新しいスタイルの解剖生理のテキストである。学問分野として確立している解剖学・生理学の枠を超えて看護の症状マネジメントに必要な解剖生理の最重要事項を凝縮して説明しており,コラムでは病態理解や臨床実践に役立つ内容の濃い説明があり,看護職が今後,解剖生理も教育していくことを示唆する画期的な書である。
コラムの具体的な内容の一部を紹介する。“第9章神経系”の脳幹の項目では中脳,橋,延髄と投射について解説し,コリン(Ach)作動性ニューロンやセロトニン(5-HT)作動性ニューロン,ノルアドレナリン(NA)作動性ニューロンの分布までコンパクトに重要なエキスの部分だけを説明し,全体像がとらえやすくなっている。とても画期的である。さらに,日本の臨床家が日常的に使用している意識障害レベルの測定尺度JCS(ジャパン・コーマ・スケール)も丁寧に説明している。一部を紹介すると,“わが国で用いられている意識障害の程度を表すスケール。覚醒しているか否かで評価し,覚醒していないときは,呼びかけや指を圧迫するなど痛み刺激を与えたときに覚醒するか否かで評価していく。点数が大きいほど意識障害の重症度が高い”とあり,JCSとして‘Ⅰ-1見当識は保たれているが意識は清明ではない’から‘Ⅲ-300痛みにまったく反応しない’と詳細に使い方を解説している。JCSを使っている医師・看護師でないと,ここまで詳細に記述できない。そこまで看護実践を想定している教科書をみたことがなく,感動である。
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