特集 よい論文とは? おもしろい論文とは?
よい研究の基盤─実践における価値と背景にある知識を結びつける
大西 麻未
1
1順天堂大学大学院医療看護学研究科
pp.458-461
発行日 2016年10月15日
Published Date 2016/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201289
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自身の研究から
筆者はこれまで,よい看護を提供するための組織のあり方,中でもチームプロセスに関心を置いてきたが,その一つとして,看護チームにイノベーションをもたらす風土(革新的風土)に関する研究がある。革新的風土とは,その職場の人々が共有する,仕事の方法の修正や新しい取り組みに対する肯定的な態度・行動パターンであり,皆が意思決定に参加する環境や,仕事の質を互いに確認し合う行動によって測定できる,組織の学習や変革に結びつく集団特性(Anderson & West, 1998)である。
筆者が取り組んだ研究では,革新的風土の測定尺度の日本語版を作成し(大西,2013),それがチームメンバーの仕事の満足や目標達成度の評価などと関連する,看護管理上有用な指標であることを確認した。また,革新的風土を高める要因について調査を行ない,教育の充実など病院の実践環境上の要因と,看護師長がチームに対して外部からの評価や期待を適切に伝えることなど,チーム外環境との結びつきを強化する行動(Boundary spanning;境界連結行動)が影響を及ぼしていることを明らかにした。これらの結果によって,チーム評価に活用できる指標を得たことと,組織をいきいきと活性化させるために必要な管理者の行動についての理論的示唆を得たと考えている。研究者として学びながら進めた研究でもあり,未熟な点も多いので,よい研究の要素がそこに充分にあるというよりは,そこからさまざまに考えたことを記述したい。
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