増刊号特集 大学院で学ぶ意味─新たな看護を創るために
〈修士修了の立場から〉
“わからないこと”を考え続ける─その原点としての修士論文
細野 知子
1
,
西村 ユミ
2
1首都大学東京大学院人間健康科学研究科看護学領域博士後期課程
2首都大学東京大学院人間健康科学研究科
pp.339-342
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681201137
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■修士論文の概要
「入院を繰り返す2型糖尿病者の生活における病いの経験─ライフヒストリーの構成とその解釈を通して」
入院を繰り返す2型糖尿病者へのかかわりに頭を悩ませた臨床経験に端を発し,彼/彼女らの生活における病いの経験を,ライフヒストリーの構成とその解釈を通して記述した。語りから構成した2名の研究参加者(Dさん,Eさん)のライフヒストリーより,その病いの経験の主題を探究した。夫,一人娘と暮らし,パートタイマーであるDさん(50歳台女性,2型糖尿病歴15年)からは,《2型糖尿病とともにある生活に伴う実感が更新される》,妻子が家を出ていき一人暮らしをしていた会社員のEさん(50歳台男性,2型糖尿病歴15年)からは,《人生の意義を探求し続ける生活に付随してくる2型糖尿病》という主題が見いだされた。ライフヒストリーを通して記述された2型糖尿病者の経験からは,偶然性に主導権を握られた病いのあり方,コントロールをめざす専門職者との見方の隔たりが浮かび上がった。また,それらは複雑で矛盾をはらんだ生活をありありと伝えており,生涯にわたり続く病いである2型糖尿病者の経験を知り,それに即した援助が必要であることが示唆された。
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