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報告
分娩直後の新生児に対する母親の行動—研究の動機と今後の展望
野村 紀子
1
1北里大学看護学部
pp.322-327
発行日 1988年7月15日
Published Date 1988/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200982
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研究の概略
はじめに
私たちは,数多くの分娩の場面に接し,分娩直後の母親とその新生児との初回対面を行なう。分娩に携わる助産婦にとっては,看護の一場面として大切に考えている場面でもある。また,母親にとっても,感激的な場面である。分娩を無事終了したすべての母親は,長い妊娠期間と,不安なかつ苦痛を伴う分娩時期を終了し,その新生児,夫,そして他の家族への責任を果たした喜びとうれしい解放感を味わう。その場面は,最も美しい感動的な愛情の表現としてとらえることができる。こうした場面に接する助産婦にとっても,長い緊張感の後の安堵感であり,分娩を終了した母親ともども自分自身の喜びであるともいえよう。しかし,新生児との初回対面時に,すべての母親が同じ行動や表現で,その喜びを示すとは限らない。
母親とその新生児との結びつきが,その子供のもつ生得型反応と,母性行動との相互作用によって成立するという事実は,すでに明確にされている。しかし,母親がそれぞれの新生児に,アタッチメントを成立させていくプロセスについては,十分解明されているとはいいがたい。ボウルビィによれば,初期のアタッチメントは母親の行動に維持されているともいう。
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