特集 分娩直後の出血:その病態・看護診断・救急処置
分娩直後の異常出血とは
鈴木 正彦
1
,
斉藤 博恭
1
1杏林大学医学部産婦人科
pp.460-467
発行日 1986年6月25日
Published Date 1986/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206890
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はじめに
近年妊娠に関連した母体死亡は急激に減少してきている。歴史的にその背景を考えれば,抗生物質の発見開発,輸血及び血液型検査法の確立,経済状態の好転などを踏まえた公衆衛生の発達(保健所,救急体制など),妊娠及び出生前管理の進歩と医療従事者の各種疾患に対する病態の把握,理解の向上等があったと思われる。確かに,敗血症,子癇,妊娠中毒症は劇的な減少傾向を示し,前置胎盤,常位胎盤早期剥離,羊水栓塞症の救命率もまた増加している。さらに種々の偶発合併症(慢性腎炎,糖尿病,心疾患等)についても,妊娠前は無論のこと,妊娠中の管理もほぼ満足すべき状態と考えられる。しかし厚生省ハイリスク母児管理班報告(昭和58年)では,母体死亡で出血に関するものが外妊,流産,分娩時大出血を含めて第1位であるとし,分娩時では弛緩出血が多く,早剥,子宮破裂,DIC,前置胎盤が主なものであり,産科救急の特殊性(突発的,急速悪化,夜間休日),二面性(母体と胎児もしくは新生児),社会性(救急体制,輸血)を考え,改善していかなければならないとしている。以上の原因に妊娠中毒症,心疾患,羊水栓塞,脳血管障害,敗血症を加えると,毎年全国で約200人の母体死亡が存在する。
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