焦点 Attachment
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「父親—胎児愛着行動の探究」の翻訳にあたって
前原 澄子
1
1千葉大学看護学部
pp.320-321
発行日 1988年7月15日
Published Date 1988/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200981
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心理学の領域において,愛着Attachmentとは,人間と情緒的に結びつきたいという要求をもつ状態をいっている(心理学事典,平凡社)。愛着は,乳幼児期にのみ限られるわけではなく,人間の一生にわたって複数の対象に向けられるものである。しかし,1969年に,J. Bowlbyが愛着理論をまとめ,「乳幼児期に最も身近に接し,養育をしてくれた人物に向けられる愛着が最も根源的であり,その後の人格形成に影響を与える。この初期の愛着の発達途上における逸脱,失敗が,後の精神疾患の原因であるとみなすことができる」と言って以来,愛着に関する研究対象は,乳幼児であるものが主流を占めていたように思われる。
わが国においても,ここ10年来,母子相互作用の研究が注目されてきた。母子相互作用によって形成される母子結合は,母親がわが子に対する愛情をもつことと,子供の母親に対する愛着(Attachment)から成り立っているとされ,この面からの研究が進んできている。一連の研究の中で,出生直後からの母子関係が,その後の児の人格形成の重要な役割を果たすという考えに立ってのものは多いが,妊娠中の母子相互作用に関しては,未知の部分が多いようである。少ない中にも,胎児の行動と妊婦の情緒との関係,妊娠に対する情緒的反応と出生後の児の発達や母子関係に関するものがみられる。
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