研究
甘えネットワーク質問紙の作成と検定—その1
南 裕子
1,2
1聖路加看護大学
2カリフォルニア大学サンフランシスコ看護学部博士課程
pp.211-222
発行日 1986年1月15日
Published Date 1986/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200873
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
第1章 序文
この研究の目的は,甘えネットワーク概念を明白にして,その測定用具を作成し,その測定用具の信頼性と妥当性を検定することにある。甘えネットワークは,日本的観念である「甘え」と西欧的な概念である「依存」,「愛着」,「共生」,「親密」,「ソーシャル・ネットワーク」および「ソーシャル・サポート」を比較検討して統合・抽象した概念である。「甘え」は,日常的日本語であるが,その意味するところは人間関係の幅広い依存性を表わすものであり,両極端の一方は「親密性」,他方には病的な依存性がある。日本語の「甘え」を端的に翻訳しうる英語の言葉はないので,これはきわめて日本的文化の所産であるといえる。
「甘え」理論は,日本の精神科医である土居健郎が,自分の臨床的,比較文化的体験に基づいて帰納的に生み出したものである1-19)。この理論は,日本社会における成人の社会心理的および人間関係的現象を明らかにしたものであるが,この理論を社会学や行動科学の領域にも応用しようとする研究者が現われている20-21)。また,甘え現象は,日本の成人の社会心理的安寧に有意義な関係があると推定されている22)。
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.