焦点 看護研究における数量化の考え方
解説
統計処理で陥りやすい問題点
高木 廣文
1
1聖路加看護大学
pp.173-179
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200652
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近年コンピュータの普及により,データを統計的に解析することが著しく容易になり,統計解析の理論を知らなくとも,各種複雑な分析が可能になってきた。それに伴い,ある程度の統計的な解析がなされていないと,科学的な研究とは認め難いというような風潮もあるように思う。そのため,特定の研究を行なう場合,得られたデータを統計的に処理することが大前提となり,このため一つの落し穴に研究者は陥りやすくなる。すなわち,研究者自身が自分の集めたデータの特性を良く把握しないうちに,統計的な解析を行なうということが起こりうる。たとえば,血圧やコレステロール値などの生理学的検査結果を,単に平均値や分散のみで示して満足することがよくある。しかし,血糖値などの測定値をヒストグラムなどで図示し,その分布をながめることも,実はきわめて重要なことなのである。このような手法は記述統計学descriptive statisticsとよばれているが,実は研究の初期の段階ではきわめて有用であり,カルテや調査票からの誤記入やデータのパンチミスなどを発見するためにも,必ず行なうべきものである。また,研究対象となった患者群の職業,年齢構成,性,居住地,病院への来院理由などは,研究の基礎資料として把握されている必要がある。これらの点が押さえられていれば,その後の推測統計学inductive statisticsの手法を用いる際の助けにもなるし,結果の解釈でも大きな誤りを犯すこともなくなるはずである。
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