研究
手術室の環境管理に関する研究—空中落下菌について
林 滋子
1
,
山本 俊一
2
,
呉 大順
3
,
高木 忠信
4
1東京大学医学部保健学科看護学教室
2東京大学医学部保健学科疫学教室
3東京大学医学部付属病院胸部外科
4社会保険中央病院
pp.304-313
発行日 1972年7月15日
Published Date 1972/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200293
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I.緒 言
近年の手術創感染率は,英米およびわが国の報告をみると,ほぼ5〜10%の範囲内にあるといえる1,2,3,4,5,6)。また,術創感染の多くは手術中における術創の細菌汚染によっておこるものとみなされている1,2,7)。術創感染を招く病因菌の汚染源や侵入経路は複雑多岐であるが,予測されるあらゆる侵入経路を遮断するための努力が,実際に感染の発生率を低下させていることが,これまでの多くの報告からみられている。手術室環境における感染防止対策としては,患者,職員,また術創に接触する材料・器具類への無菌対策が重要であることはいうまでもないが,同時に空気経路による病因菌の侵入を遮断することが不可欠である。従来,空気経路による感染で問題とされているのはブドウ球菌であるが,環境管理の実際面からは,空中に浮游する全菌数を少なくすることが,結果として空中のブドウ球菌や他の病因菌の数を減少させることになるといえる。
手術室における空中菌数に関する報告は数多くあるが,そのほとんどのものは,短期間の観察によるものである。また術後感染の起因となった型のブドウ球菌が空中浮游菌として検出される率はきわめて低いのが従来の報告で一致した成績であったが,これは一般には非常に少ない空気サンプルしか検査しないことによるためであるともいわれている8)。
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