連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第9回
空中にかくノート
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.352-353
発行日 2012年4月15日
Published Date 2012/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102174
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「何かをかく」という作業は、普通はごく個人的なものだ。
頭に浮かんだ考えを文字にかきつける。紙に向かっているとき、人は一人になる。たとえそれが介護日誌で、あとになって誰かに読んでもらうものだとしても、かいているときは一人だ。他の人が居並ぶ教室や会議室でノートをとっているときでさえ、そのノートに向かっているのは一人きりであって、誰かと一つのノートを分け合うのではない。私たちはそれぞれ下を向き、目の前に設えた一人用の小さなスペースに向かって、ペンを動かしている。
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