研究
手術室の環境管理に関する研究—ブドウ球菌について
林 滋子
1
,
山本 俊一
2
,
呉 大順
3
,
高木 忠信
4
1東京大学医学部保健学科看護学教室
2東京大学医学部保健学科疫学教室
3東京大学医学部付属病院胸部外科
4社会保険中央病院
pp.297-303
発行日 1972年7月15日
Published Date 1972/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200292
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I.緒 言
手術場面を細菌学的に安全に保つことは,手術室環境管理上のきわめて重要な課題である。手術室においては,材料・器具・器械類,空気,職員,また患者自身が感染源となりうるので,患者がこれらによる感染危険にさらされないよう手術環境が整えられなければならない。しかし手術室無菌法の実際においては,滅菌可能な物件を除き,病因菌を遮断することはたいへん困難なことで,このためには多大の工夫と努力が必要である。
今日,抗生物質の普及に伴い,治療に対して抵抗力の強いグラム陰性桿菌による院内感染の問題がより重視されてきているが,無菌手術例の術創感染では,依然,ブドウ球菌が起因菌のかなりの部分を占め,特に薬剤耐性ブドウ球菌による術後感染の防止問題は重要である。黄色ブドウ球菌は化膿巣のみならず,健康者の鼻腔,咽頭,皮膚にも定着する。また病院内職員の同菌保有は特に外科手術に際して大きな意味をもち,それが周囲を汚染し,直接的,間接的に患者に感染をおこす危険が大きい。
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