総説
看護研究の今日的課題・1
小林 富美栄
1
1東京女子医大付属高等看護学校
pp.18-20
発行日 1968年1月25日
Published Date 1968/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200089
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
看護研究の背景
わが国でも看護の職業としての歴史は長い。しかし看護は経験によってその時,その時の問題場面を収拾する方法を知り,その過程で有効な結果を引き出した方法を定型的な看護行為として用いてきたにすぎない。これは,看護が医師の治療行為上の助手的役割を受け持たされ,医師の行動に従属する立場をとってきていた職業であり,その職業的資格に対する要求も,長い間,この地位にとどまることを余儀なくされた程度のものであった。看護が科学的な知識を中核として実践されるべきものという認識を一般に看護婦が得たのは戦後である。独立した専門職業として看護の地位を確立するということについては,いろいろな表現が用いられ,看護界の内外から刺激が発せられ,今日では看護は専門職業といいきっている傾向である。今日行なわれている看護の実際的業務がすべて専門職業の水準にあるのではないが,専門職業として発展していくべきであるとはすべての看護婦や理解者が考えているところである。専門職業としての看護を確立するためには,実践行為の理論的な裏づけとして科学的知識の体系がなければならない。
看護の知識的体系を科学的に確立する,すなわち,"看護学"を確立することは,近代看護を負っているものが強く志向しているところである。看護の科学とは何か,今日においてわれわれはまだそれを明らかにしていない。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.