- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに
統計学をデータ解析に使用する目的は,その研究の目的に応じてさまざまかもしれませんが,ひとつだけ共通するところがあると考えられます。「糖尿病患者の新薬群と標準薬群を比較して,3か月後のグリコヘモグロビンの平均値に有意差があることを示したい」「新しい禁煙のための教育方法は従来の方法よりも,半年後の禁煙の継続率が有意に高率であることを示したい」,または,「セルフエフィカシーと職務満足度には有意な相関が認められることを示したい」などというように,統計学的に検定の結果が有意となる結論を得たいはずです。
研究の結果が統計学的に有意でない場合には,たとえ学術誌に投稿したとしても,何のエビデンスももたらさないのですから,通常はリジェクトされるのが普通でしょう。研究のために調査を行ない,収集したデータを解析し,その結果として,なんらかの研究上の価値ある結論を得るためには,少なくともデータの統計学的解析を通じて,主となる研究目的に関しては,有意な結果を得なければなりません。このためには,検定の特徴について,特に標本数と検定の関係を熟知しておく必要があるでしょう。
前回説明したように,統計学的仮説検定においては,「帰無仮説」と呼ばれる検定の目的に応じて,特別な仮説を設定します。その帰無仮説を否定することにより,2グループ間の母平均値に有意差があることや,2変数間に有意な相関があることを示したりします。
この帰無仮説を用いる検定では,2つのグループの母平均値に本当に全く差のない場合や,2つの変数の間に完全に相関のない場合以外には,必ず統計学的に有意となる結果を得ることができるのです。検定のもつ性質として,何となく納得しにくいかもしれません。しかし,この帰無仮説のもつ性質から導かれる結論は,研究デザインを考える上で,極めて重要な点になります。以下に,簡単に説明したいと思います。
Copyright © 2014, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.