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はじめに
統計学は,人間を対象とする研究では必ず使わなければならないデータ解析ツールです。近代看護の祖であるナイチンゲールが統計学の専門家であったことは,よく知られた事実です。しかし,ナイチンゲールが活躍した頃には,まだ使うことができなかった便利な統計学的方法が,現在では誰でも使うことができます。それが「検定test」です。正確には,「統計学的仮説検定」ですが,本稿では「検定」で済ませることにします。(何が便利なのかは,あとで説明しますので,少しお待ち下さい)
現在では,パソコン用の統計解析ソフトが普及していることもあり,あまり統計学の知識がなくとも,卒業研究でもやろうと思えば高度な解析方法を用いることも可能です。しかし一方では,解析はしたものの得られた分析結果をどのように解釈したらよいのかわからない,または,一応解釈したもののその解釈に自信がもてないなど,少なからぬ研究者が悩みを抱えていることもあるようです。
現在,ほとんどの大学や研究施設では,研究を開始する前に倫理審査を通過する必要があり,その場合に,研究デザインが問題になることが多くあります。倫理審査委員会で,なぜその研究では対象者数が100名ではなく200名必要なのか? など,標本数を決めた科学的根拠を示すことを要求されることがよくあります。
これらの問題をクリアするためには,どうしてもある程度は,検定についての正しい知識が必要です。さらに,用いる検定で必要とされる標本数がどのくらいになるのかという,研究デザインに直結する知識も要求されることでしょう。
この連載は,検定に関するこれらの点について,可能な限り平易に解説することを目的としています。ただし,統計学は実用の学門ですので,解説を読んだだけではピンとこない可能性が大きいので,できれば読者自身の行なっている研究に即して,実際に例題などに取り組んでみることをお勧めします。
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