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はじめに
自由記述回答や半構造化インタビュー,ナラティブ・インタビュー,フォーカスグループインタビュー等の口頭データ収集法によって得られたテキストデータの分析は,研究者が想定し得ない新たな知見,開放的発見を導き出す可能性を秘めている。看護学では,個人のもつ健康の意味と表現についての深く隠された,微妙で,主観的な現実と事実を発見することをめざし,テキストデータの分析のために,これまで質的研究法が用いられてきた(Flick,2002)。
しかし質的研究法は,分析者がテキストを読み取り解釈していく方法であるため,弱点もある。発話データの対象者が数名であれば,質的方法の解釈手順を踏むことは可能である。しかし,サンプル数が数十,数百,数千,数万と膨らめば,人間の思考能力の限界を超えてしまう。また分析結果から,対象とした現象から母集団を推定することには向いていない上,原理的にも,結果から一般化するのは難しい。さらに,分析過程が第三者からみえにくく,別の分析者がテキストの内容を異なった文脈で解釈してしまう,つまり同じ分析者であっても,場面や時が異なれば解釈も異なるという危険性をはらんでいる。結果を導き出す過程は研究者の思考過程そのものであって,経過の記録はどこにもない。
このような課題を克服する可能性の1つとして,テキストマイニングの活用が考えられる。
テキストマイニングは,テキストデータを形態素解析し,単語を変数とみなして計量的に分析する手法で,「自然言語処理技術,情報検索やデータベース技術,主成分分析,判別分析,因子分析,数量化法などの多変量解析の手法など,様々な技術を組み合わせた複合的な技術」(保田明夫,2006)によって構築されている。テキストマイニングは,さまざまな変数を手がかりに大量のテキストデータを,分析のステップごとにデータ処理の証拠を残しながら,系統的かつ多面的に分析することに長けている。
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