特集 質的研究方法を用いた博士論文作成指導の技法―メンタリングプロセスに焦点を当てて
扉
萱間 真美
1
1聖路加看護大学
pp.360-362
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100799
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「博士論文を書くプロセスは自分との戦い」と,昨日会った院生が何度も言っていた。よく聞く言葉である。でも,ちょっと待ってよ,と,この特集の原稿を読み込んでいる私は思った。戦いを意識しすぎると,肩に力が入りすぎ,研究テーマに向かうためのエネルギーが,頭の中の仮想敵との戦いに費やされてしまう恐れがある。
研究テーマを見失わないで,シンプルにデータと向き合うことは難しい。本特集号には,質的研究方法の第一線の指導者に多数ご寄稿いただいたが,一様にその難しさに触れている。オリジナリティのある概念を生み出すためには,データの力(すなわち現象のリアリティ)と,自分がデータから普遍性を読み取り,概念を創り出す力を信じることが前提である。その信頼がもてなければ,院生は,学位がとれるかどうかということへの不安に押しつぶされそうになり,その不安と戦うことになる。それは自分の影と戦うようなもので,混乱や焦燥を招くことはあっても,創造的にはなりにくい。
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