焦点 事例研究と仮説
私論
事例研究の仮説の意義とその活用についての考察
島内 節
1
1国立公衆衛生院看護学部
pp.11-16
発行日 1980年1月15日
Published Date 1980/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681200601
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はじめに
事例研究法は看護のみならず他領域においても特に実践的研究として重視されている。看護においては事例研究は数多いが,集積性をもって理論体系に組み込んでいく努力,あるいは理論を活用して,それを高めて共有しようとする努力には欠けるように思われる。
その理由は,事例報告にとどまる例が多いこともあげられる。実践において事例報告はそれ自体大きな意味を担っているが,それはただちに理論化をめざすものではなく,事実の記述が主目的となる。そこで分析過程での視点が不明瞭で,結果に至った理由・根拠も不明瞭なために,特定の場を離れた別の場では応用しにくいという限界をもつ。そこで少なくとも取り組んでいる本人は研究なのか報告なのかの区別を明確にしておく必要はある。その一つの違いが現象を見ていく過程で仮説(予測,予想,見通し,仮定などといわれる)をもつかどうかという点であろう。
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