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はじめに
私が初めて看護実践者として看護研究に取り組んだのは,地方の中規模病院に勤めて2年目の頃である。この病院は,継続教育の一環として看護研究に取り組んでおり,臨床経験2年目の看護師が中心となって,1年かけて研究を実施し,成果を院内で発表する形式をとっていた。新人看護師を卒業して,一通りの看護をなんとか展開できるようになった矢先に直面した新たな課題である。
夜勤明けに同期のメンバーと悲壮感漂う顔をつきあわせながら相談したり,休日を使って図書館に通い文献を集めたりして研究計画書を作成し,何度も主任さんに指導してもらいながら,青息吐息で取り組んでいた。正直,本当に大変な経験であった。しかし,終わってみると,やってよかったと感じたことも事実である。研究テーマが,うまく実践できなかった看護の改善に直結する内容であり,明日,目の前の患者さんにいかせる実践のヒントを得られたからだ。また,共に研究に取り組んだ同期や先輩との団結力も高まり,達成感も味わった。
あれから私は看護教育に携わるようになったが,15年余り経ち,縁あって院内研究発表会の講評を担当する機会をいただいた。私が取り組んでいた当初よりも発表会の規模が拡大しており,活発な質疑応答も展開され,人的・物的・時間的制約の大きい病院が看護研究を継続,発展させてきたことに強い感銘を受けた。
一方,臨床における看護研究については,本特集中に述べられているように,さまざまな課題や障壁が指摘されている。そのような課題や障壁があってもなお,なぜ病院は看護研究に取り組むのだろうか。そこで本稿では,看護管理者が知覚する臨床看護研究の意義に関する調査結果をもとに,病院が看護研究に取り組む意義の特徴について述べることとする。
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