- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
質的研究にしても量的研究にしても,私たちはなんらかの方法で,関心ある現象を,分析可能なデータに置き換えなければならない。Polit & Beck(2008)は,看護研究でよく用いられる方法として,自己報告法(self-report),観察(observation),生体生理学的測定(biophysiologic measure)をあげている。
自己報告法は,人々が何を考えているのか,過去,現在,未来にわたる人々の動向を知りたい場合には効果的な方法である。自己報告法としては,インタビュー(面接)と並んで,自記式アンケート(質問票)を用いたデータ収集は非常によく行なわれるが,質の高いデータを集めるのは大変難しい。アンケート調査を実施した経験がある方なら,「こんなはずではなかった」「結局,明らかにできなかった」という不全感を味わったことが一度はあるだろう。まず,他人が発した質問を正確に理解すること自体難しい。1つの言葉から思い描く内容は,十人十色である。さらに,それ(質問)に回答を書くことが難しい。質問票は特定のテーマに強い関心をもち,それに関する十分な知識をもった,すなわち教育を受けた研究者によってつくられる。研究者は,自分と同じレベルの知識と熱心さで,人々が質問に取り組んでくれることを期待してしまう。しかし,それに回答するのは,そのテーマについて関心もなければ,理論的に考えたり,書いたりする機会もあまりなく,それどころではない日々の出来事に心奪われながら生きている方たちである。かくして,質問項目は難解で複雑すぎたり多すぎたりして,思ったように回答してもらえない。
質問票を設計するのは,尺度開発とはいわないまでも,かなりの妥当性,信頼性の検討が必要だと思う。そして,その質問票に答える方たちのことを思い浮かべ,その方たちが苦労や負担なく回答していただけるよう工夫することが,よい結果を得る秘訣だと思う。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.