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看護理論はヘルスケアにおける看護の進化に極めて重要な役割を果たしている。19世紀後期,英国のF. ナイチンゲールは,人間の健康と幸福における身体的および社会的環境の重要性に自身の理論的焦点を制定化することにより,看護実践を専門職業へと位置づけた。20世紀初期には看護の理論的革命は勢いを失い,以前にも増して知的,情緒的,政治的に医学に依存した看護実践になった。しかし,20世紀が進むにつれ,理論的思考を備えた看護のリーダーたちが,教育,研究,実践における看護の進化を明確化し活性化する力となった。1952年,H. ぺプロウによる人間関係の看護論は,看護師と患者の人間関係に主眼をおくことをはじめて論じ,この考え方はいまもなお看護実践の中心を成している。他の理論家も後に続いた。
本稿は看護の理論的側面を概観し,すべての看護師が各々の専門領域のための科学的知識の構築に参加するよう奮起させることをめざすものである。看護の理論的基盤に対する意識をもち続けなければ,看護学はヘルスケアにおいて唯一無二の革新的な科学として存続できなくなるであろう。
スペイン系アメリカ人哲学者であるSantayana(サンタヤナ)は,「科学的理論(scientific theory)は,私たちが世界の様相や編成を知る一助となる美しいものである」と提唱した。看護師にとって,理論は2つの方法でサイクルとして機能している。すなわち,理論は私たちの実践や研究から看護の知識の1つの形として現われ,また私たちの実践や研究の道しるべとしても機能している。理論は,実践家や研究者が自分自身の活動を達成し,また,日々の仕事から観察し発見したことを意味づける助けとして,看護の視座や根拠を,持ち運びや変形が可能な知識の小包に編成する手段である。
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