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はじめに
医療における診断・治療技術の向上は病気の子どもにも寄与し,それにより救命される子どもは増え,自宅での生活を可能にした。これらの治療法の1つに,短腸症候群やヒルシュスプルング病類縁疾患などに行なわれてきた在宅中心静脈栄養法(home parenteral nutrition ; 以下HPN)がある。
在宅で中心静脈栄養法を行なうには,手技の獲得が条件となるが,多くの家族はこうした医療処置をはじめとする在宅ケアには不慣れであり,子どものためとはいえ,手技の獲得など在宅ケアに必要なさまざまな要素が大きなストレッサーになっていると思われる。
レジリエンス(resilience)という概念は,捉え方でポジティブにもネガティブにも変化するストレッサーを,ポジティブな視点で捉えている。Grotberg(2003)は,3~14歳の子どもを対象に14か国で調査を行なった結果から,レジリエンスは,「I」を主語とする「I have」「I am」「I can」の3要素から構成されており,不可抗力の逆境に直面し,それを乗り越え,その経験によって強化される人間の適応力であると定義した。
HPNを施行する子どもや家族は,不安や心配を抱え込みながら,手技の獲得というストレッサーから始まり,その後何度もトラブルに見舞われながらも,トラブルに立ち向かい解決し乗り越えて,自宅での生活を手に入れたと考えられる。筆者はこれまで,HPNを施行している学童期の子どもと親を対象として面接調査を行ない,発病から現在に至るまでの闘病のなかで,活用されてきたレジリエンスを見いだし,子どもや家族に対する効果的な看護介入を考察するという目的で研究を進めてきた。
本稿では,その研究報告を中心に,HPNを実施している学童期の子どもと親のレジリエンス構造について述べてみたいと考えている。
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