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はじめに
今回筆者は,本焦点に原稿を掲載する機会が得られ,大変ありがたく思うと同時に,非常に恐縮している。看護学研究について初学者で,質的研究法もまだまだ勉強不足であった筆者が今回執筆することができたのは,ご指導くださった先生方のおかげである。
筆者が質的統合法(KJ法)を初めて知ったのは,修士1年目の2006年11月に千葉大学で行なわれた,山浦晴男先生を講師とする研修会の時であった。研修会に参加するにあたっては,川喜田二郎氏の『発想法』を読んだ。研修会では,元ラベル50枚程度を材料とする作業に2日間かけて取り組んだのだが,このとき,普段自分が物事を考える際とはまた別の頭の使い方をすることに非常に苦労した。ひたすらラベルを読み,ラベルが語ることにひたすら耳を傾けるという,忍耐が必要な作業であった。しかし,最後の空間配置がぴったり決まった時は,なんともいえない「腑に落ちる」感覚を味わった。
山浦先生には,修士論文作成にあたって,インタビューデータの分析のみならず,問題意識の探索,研究テーマの明確化の段階からご指導いただいた。直接指導に加え,メールでもいろいろと添削をしていただいた。先の研修会では多くの参加者が,修士論文のデータ分析についても山浦先生にご指導を受けたいという希望者が集まり,その後新たに研修会の企画が設けられるほどであった。
今回,母性看護学のエキスパートである森恵美先生と,質的統合法(KJ法)の専門家である山浦先生との複数の視点でご指導いただけたことは,非常にめぐまれていることだと思っている。母性看護学の専門家ではなく,しかも男性である山浦先生が,分析の結果浮かび上がってきた「見取図」を用いて,出産体験をありありと説得力をもって解説されていることは,なんとも不思議であった。
筆者の修士論文「医療介入を伴う経腟分娩となった女性の出産体験について」では,個別分析の方法として質的統合法(KJ法)を用いている。本稿では,修士論文の一部を加筆修正し,個別分析結果を詳しく示しながら,事例研究として紹介したいと思う。
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