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背 景
近年のがん治療の進歩により,乳がん患者の長期生存が可能となった。しかし,乳がんの病創部が体表にあるために,乳がん患者は不安や抑うつなどの精神的負担を抱え(惣滑谷,1996),心理・社会的問題を伴った生活を送っていることが問題となっている(Pinder et al., 1993;高橋,1997)。特に,再発時においては初回の診断時よりも不健康だと感じており(Hanson et al., 2000),乳がんの病期のなかで最も精神的負担が大きく(Okamura et al., 2000 ; McEvoy & McCorkle, 1990),なかでも初再発時の衝撃が大きいことが報告されている(Cella, Mahon & Donovan, 1990 ; Butler et al., 1999)。
このように,乳がん患者の身体的問題だけでなく心理・社会的問題に対してもフォローする必要性が明らかになるに伴い,乳がん患者の精神的負担を減少させ,Quality of Life(QOL)を向上させるための心理・社会的介入の有効性を検証する研究が行なわれてきた(Fukui et al., 2000 ; Hosaka, Sugiyama, Tokuda, Okuyama, 2000 ; Fawzy et al., 1990 ; Classen et al., 2001 ; Spiegel, Bloom & Yalom, 1981 ; Goodwin et al., 2001)。がん患者のQOL向上のための心理・社会的介入には,個人的に関わる方法とグループで関わる方法がある。個人的なカウンセリング法は,進行がん患者の精神的負担の軽減に効果的とする報告があるものの(Linn, Linn & Harris, 1982),1度に1人の患者にしか対応できないという欠点を有している。それに対し,グループ療法は参加者同士が互いの状況を理解しサポートし合うことができるという特徴を有し(Yalom & Vinogradov, 1975),コストパフォーマンスがよく(Classen et al., 2001 ; Yalom et al., 1975),多くの患者に対応でき,個人的なカウンセリング法と比べてQOLの向上に対する効果に差がないことが報告されている(Sheard & Maguire, 1999 ; Cain, Kohorn, Quinlan, Latimer, Schwartz, 1986)。
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