連載 ウイルスの一生で理解する遺伝子の最新基礎知識【6】(最終回)
分子レベルの生命現象から考える科学論
佐藤 聡
1
1University of Cambridge, Centre for Protein Engineering
pp.603-609
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100048
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先日,共同研究者が開発した特殊な実験装置を使わせてもらうため,米国のロスアラモス国立研究所を訪れる機会がありました。ニューメキシコ州の州都アルバカーキーから荒野のなかのハイウェイを2時間ほど走ると,小高い丘の上に突然小さな街が現れます。住民のほとんどが研究所関係者というこの街のはずれの広大な敷地のなかに点在しているのが,ロスアラモス国立研究所でした。ご存知と思いますが,この研究所は第2次大戦当時,原子爆弾の開発拠点となっていたところで,広島と長崎に投下された原子爆弾はここで設計され組み立てられました。現在,核研究はなされていないということですが,軍事研究はまだ行なわれているようです。爆発音と,遠くで土煙が立ちのぼる光景を滞在中何度か目にしました。
日頃,先端科学情報を広く一般の人々に伝えていくことは科学者の重要な仕事の1つであると思っていますが,ここに来ていっそうその思いを強くしました。専門的情報を患者に伝えていくという点で,それは医療や看護の分野にも当てはまるのではないでしょうか。この連載を締めくくるにあたって,まずそうした情報伝達の重要性について考えたことを記してみたいと思います。そのあとでウイルスの一生のまとめをしていきます。
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