特集 HTLV-1母子感染予防の新方針
「HTLV-1母子感染予防対策マニュアル(第2版)」改訂の経緯と概要
宮沢 篤生
1
1昭和大学医学部小児科学講座
pp.426-431
発行日 2023年10月25日
Published Date 2023/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202190
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HTLV-1ウイルス感染症の概要
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)はヒトに感染するレトロウイルスの一種である。Tリンパ球(CD4陽性リンパ球)に感染し,ウイルス遺伝子が染色体DNAに組み込まれたプロウイルスとして感染細胞内に定着し持続感染する。このプロウイルスDNAから,ヒトのRNA合成機能や蛋白合成機能を利用して,新しいウイルス粒子が合成される。感染細胞と非感染細胞が接触することによってウイルス粒子が受け渡され,感染が拡大していく。HTLV-1に感染したヒトはキャリアとなり,約95%は無症状のまま一生涯を過ごすが,約5%が成人T細胞性白血病(adult T-cell lymphoma:ATL),約0.3%がHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)といった難治性疾患を発症する。
HTLV-1キャリアは世界で500万〜1000万人と推測されているが,日本,カリブ海諸国,南米,西および中央アフリカなど特定の地域に集中している1)。日本は先進国の中では唯一の流行地域であり,国内のキャリア数は1988年の献血者のデータを基にした調査では約120万人,2006〜2007年の調査では108万人まで約10%減少した2)。従来,キャリアの分布は九州・沖縄を中心とした西日本に集中していたが,近年では人口の移動に伴い東京・大阪・愛知といった都市圏にも拡大しつつある。
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