実践報告
産科混合病棟における災害発生時の妊婦受け入れ体制の充実を目指して—「令和2年7月熊本豪雨災害」の経験から得た今後の課題
矢立 智春
1,2
,
宮川 智美
2,3
,
白川 幹子
4
,
松崎 好江
4
,
福田 奈美
4
1愛甲産婦人科麻酔科医院
2前 独立行政法人 地域医療機能推進機構 人吉医療センター
3鹿児島中央助産院
4独立行政法人 地域医療機能推進機構 人吉医療センター
pp.620-626
発行日 2022年12月25日
Published Date 2022/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202084
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2020年7月3日深夜から4日未明にかけて南九州を襲った線状降水帯は,記録的な豪雨をもたらし,球磨川の氾濫により,人吉市や球磨川沿いの地域は甚大な被害を受けた。独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)人吉医療センター(以下,当院)では1階部分が足首の高さまで浸水し,一時,大型機器やエレベーター,エスカレーターなどが使用できない状況となった。発災当日から2日間,救急を中心とした災害診療を行いながら復旧作業に徹した結果,4日午後には電子カルテが稼働し,発災後3日目には平常診療も可能となった。固定電話は7月7日に復旧した。職員の人的被害はなかったが,住居65棟,車74台が浸水し,避難所生活を送る職員もいて,20数名は出勤できない状況であった。
人吉市の被害状況は全壊902棟(1088世帯),半壊1450棟(1898世帯)死傷者70名(うち死者21名)1)であった。人吉市内の医療機関は62施設中33施設(53%)が被災した。産科施設においては,当院以外の個人病院2施設が被災し病院機能が不能となったことで,当院産科病棟で分娩・妊娠管理・受け入れが必要となった。
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