連載 りれー随筆・443
365日を埋めていく
安井 まどか
1
1大阪大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター
pp.974-975
発行日 2021年12月25日
Published Date 2021/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201955
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「新型コロナウイルス」という単語を初めてニュースで聞いた日から,もう丸2年が経とうとしている。道行く人々が皆一様にマスクをしている姿を2年前の私が見たら,さぞかし異様な光景と思うことだろう。感染予防のために必要だと分かっていても,マスクをしているためにストレスに感じることはいろいろある。
中でも個人的に残念だと感じるのは,空気の匂いが分かりにくいということだ。柔らかな日差しや咲き誇る花の香りが混じった春の匂い,夕立が降る直前や雨上がりの湿った埃っぽい夏の匂い,澄んだ空気に枯葉の混じる秋の匂い,夜になるとツンと鼻の奥まで刺すような冷たい冬の匂い。家を出た瞬間,深呼吸する空気の温度や匂いで季節の変わり目を感じる瞬間が大好きなのだが,マスクをしているとそれを感じにくくなった気がする。いつ終わるとも分からないコロナとの闘いの中,不要不急の外出は自粛を求められ,職場と家の往復が続くばかりでは文字通り息が詰まってしまう。
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