連載 りれー随筆・439
私の使命
宮下 絵美
pp.632-633
発行日 2021年8月25日
Published Date 2021/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201865
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人生は思い通りにならないことが多々あります。私にとっては出産がその一つでした。初めての出産は緊急帝王切開でした。いわゆる健康体で,周りからも安産体型だねと言われ,スポンと産めることを信じて疑わなかった自分。だけど実際は微弱陣痛,妊娠高血圧症候群,痛みで絶叫し続けて麻酔分娩導入,児頭骨盤不均衡疑い,分娩停止で緊急帝王切開でした。分娩直後は,経腟分娩できなかった挫折感,痛みに負けたという敗北感,8割の人が経腟分娩なのに自分は残りの2割という屈辱感,医療という手助けがなければ産めなかった,何のための女性器なのかという女性性の否定,いろんな感情が産後の私に押し寄せ,涙が止まりませんでした。
産後しばらくすると次の出産以降もリスクを考えると帝王切開を選択することになり,もう2度と経腟分娩は経験できないんだという喪失感が出てきました。さらに経腟分娩で出産直後に「かわいい」と言ってわが子を抱き上げたかったのに,帝王切開中の麻酔で気分不快のため嘔吐しており,わが子の出てくる瞬間に心から喜びの声を上げられなかったことに自分の母性のなさを感じ,自分自身に幻滅もしていました。友人が出産したと聞くと「経腟? 帝王切開?」と気になり,経腟分娩だと知るといら立ちを感じたり,帝王切開と聞くとホッとしたり,産み方にこだわっている自分がいました。
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