海外レポート
Boronia Pre-release Centre for Womenを視察して—オーストラリア・パース州における女子受刑者の社会復帰に向けた取り組みの一例
鈴井 江三子
1
,
小村 大樹
2
1大手前大学国際看護学部
2加古川刑務所
pp.604-607
発行日 2020年8月25日
Published Date 2020/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201596
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はじめに
『助産雑誌』72巻4号(2018年4月号)で,アデレード女性刑務所(オーストラリア・アデレード州)における女子受刑者への社会復帰に向けた取り組みについて報告しました1)。今回,同刑務所からのご紹介で,母子への支援が充実しており,その取り組みが西オーストラリア州全土の矯正施設においてモデルとなっている“Boronia Pre-release Centre for Women”(以下,センター)で研修を行ったので,本稿ではその内容を簡単にご紹介します。
西オーストラリア州は,オーストラリア大陸の3分の1の面積を占める同国最大の州であり,広大な土地を有しています。人口は全土のわずか10%程度であり,約261万人の州人口のうち約8割が州都であるパース近郊に住んでいます。同州には17の刑務所があり,そのうち15カ所は州によって,2カ所は民間企業によって運営されています。2019年2月時点で,同州の受刑者数は6907人(男性6175人,女性732人)であり,人口の増加に伴い,受刑者数も増加傾向を示しています。このうち,アボリジニの割合は男性38%,女性45%であり,男女共に軽度,中等度,重度のレベル別に分けて収容され,全受刑者の85%は識字率が11歳(小学校高学年)程度です2)。
今回,研修を行ったセンターは,同州にある女子刑務所の1つであり,受刑者の出所前支援と社会復帰に焦点を当てた,オーストラリアの中でもユニークな取り組みをしている刑務所です。
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