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はじめに
2017年12月18〜19日,筑波大学の新たな学術提携校となるモンゴル国立医科大学看護学部において,ウランバートル市周辺の産院に勤める助産師,大学教員(医師,看護師ほか),看護学生を対象としたドゥーラワークショップ「周産期ドゥーラの実践と現代の母子保健への貢献:モンゴルの母子保健の現状と課題」が開催されました。主催はモンゴル国立医科大学で,筑波大学もスポンサーとして共催しました。
ドゥーラ(doula)とは古いギリシア語で「他の女性を助ける,経験ある女性」という意味です。本来そのような非医療的・継続的支援は,呼び名にかかわらず昔から世界中で存在し1),モンゴルでも,遊牧民のコミュニティの中など,そのような世話役を担って人々の尊敬を集めていた女性は必ず存在していたそうです。
しかし,出産ケアが医療化や分業化されるにしたがい,先進国だけでなく途上国でもそのような自然なサポートシステムは失われかけています。先進国では1980年以降,ドゥーラサポートが安産や母乳育児に効果があることを裏付ける優れた研究が多く生まれ,科学に裏打ちされた有効性が認識されるにしたがい,新たな非医療職「ドゥーラ」も欧米を中心に発達しました。例えば米国では出産の6%にドゥーラが付き添っています2)が,日本では出産ドゥーラはまだほとんどいません。代わりに日本では産後ケアを提供する産後ドゥーラが先に増えています。
今回のワークショップを実施した目的は主に2つありました。医療的な管理分娩が主流となりドゥーラの情報があまり知られていないモンゴルに,周産期ケア改善の鍵として近年ますます注目を集めるドゥーラサポートの情報を包括的に伝え,モンゴルの社会・文化に合った導入方法を現地の皆で検討すること,そして,これまで主に先進国で発達してきたドゥーラの概念を,モンゴルを足掛かりに他の途上国へも普及する可能性を探ることでした。
2日間のプログラムの概要は表1のとおりです。1日目はドゥーラサポートの概要や科学的根拠について紹介しつつ,モンゴルの周産期ケアや助産教育の状況についても学び,2日目はドゥーラサポートの概念のさまざまな応用法や,現在と今後の研究プロジェクトについて話し合いました。ワークショップの中では,モンゴルの保健省や国立研究センター,モンゴル国立医科大学からお招きした専門家による講演も行なわれました。また,ドゥーラの実践についての米国と英国のドキュメンタリー映画も上映されました。
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