心臓物語・6
モンゴルで高血圧を考えた
島田 達生
1,2
1大分大学
2大分医学技術専門学校
pp.932
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542200921
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2013年に,電子顕微鏡技術学会とウランバートル大学との学術協力協定の締結のため,初めてモンゴルを訪問した.今年の5月には,第1回中国河北省心臓血管健康シンポジウムで,“未病を治す”という内容の教育講演を行った.いずれも大歓迎を受け,モンゴル料理と中華料理を堪能した.おいしかったが,塩分が明らかに高かった.甘いよりも,やや塩気があったほうが多く食べることができる.ついつい食べ過ぎになった.モンゴル人の男女平均寿命は69歳,中国人は74歳.日本人の83歳に比べてかなり短い.モンゴルではウオツカ,中国では白酒で何度も乾杯をした.いずれも50度前後.男性の寿命が平均よりも3〜4歳低いのは当然だ.
本態性高血圧の環境因子として,食塩や脂質の過剰摂取,運動不足,肥満,ストレス,飲酒,喫煙などがある.高血圧はからだにどのような形態変化を引きが起こすのであろうか.電子顕微鏡でその謎を追ってみた.走査電子顕微鏡下で大動脈の内面をみると,高血圧という強い圧力によって内皮細胞が破壊されている([1]).内皮が壊れた後の透過電子顕微観察鏡は,内皮の修復に加えて,中膜の平滑筋細胞が圧補強のために内膜内に侵入し,内膜の肥厚が起こっていることを示している([2]).その結果,内腔が狭くなり,動脈硬化が進行する.
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