被災地からのレポート 東日本大震災 その時,被災地にある岩手県立大船渡病院産婦人科では・1
大震災から7日間の出来事―何も考えることができず,とても苦しかった7日間
小笠原 敏浩
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1岩手県立大船渡病院
pp.598-605
発行日 2011年7月25日
Published Date 2011/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101939
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はじめに
岩手県立大船渡病院(以下,当院)は岩手県沿岸南部にあり,大船渡市,陸前高田市,住田町の2市1町(人口7万929人)を医療圏とするセンター病院である。この地域の産婦人科施設は,出産施設である当院と大船渡市内の産婦人科無床診療所(クリニック)のみである(図1)。
当院は,地域周産期母子医療センターとして,隣の釜石市にある岩手県立釜石病院にも医師を派遣しており,院内助産システムでの分娩を支えている。また,出産施設のない遠野市助産院の監督医も兼任しており,身近な地域で健診が受けられる妊婦遠隔健診や医師を派遣して妊婦健診も行なっている(図2)。さらに,当院は岩手医療情報ネットワーク「いーはとーぶ」を利用した3市町村保健師(大船渡市,陸前高田市,住田町)との地域連携ネットワークシステムを構築しており,全国に先駆けて妊婦見守りシステムを推進している。
2011(平成23)年3月11日午後14時46分にこの地域を襲った東日本大震災では,高台にある当院は何とか病院機能を残したが,未曽有の大津波で多くの尊い命が奪われた。低い土地にある民家,医療施設,役所,保健福祉施設などの建物も流され,そして,産婦人科医師,助産師,保健師で大切に育ててきた地域連携ネットワークシステムに大きなダメージを残した。
現在,少しずつ復旧・復興の道のりを歩んでいるが,まだまだ長い道のりであろう。本稿では被災地である当院の産婦人科,そして産婦人科医師・助産師がどのような状況にあり,どのように活動したかを,3回にわたりお伝えしたいと思っている。
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