『妊娠 あなたの妊娠と出生前検査の経験をおしえてください』

　これまでにない「妊娠」に関する本が出版されました。と言っても医師や助産師が書いた医学専門書ではありません。女性の妊娠，そして出生前検査をめぐる経験について社会学の視点から書かれた本です。375人の女性へのアンケート調査結果と26人の女性へのインタビュー結果がまとめられています。本書は3部で構成され，第Ⅰ部は「アンケート編」，第Ⅱ部は「インタビュー編」，第Ⅲ部は「調査からわかったこと」です。

　産む女性が抱えるさまざまな不安の中で「無事に元気な子どもが生まれてくるのか」は，多くの妊婦に共通しています。これに答える1つの手段としてクワトロ検査や羊水検査などの出生前検査があり，それらを紹介している病院も増えてきているようです。この検査について医療者は，あくまで「情報提供」し，検査を受けるか否かは「自己決定」であるという姿勢です。喜びの「妊娠」の中で「生命倫理」という重い問題を意識していなかった女性が，思わぬ意思決定をせまられるわけです。